故・坂本龍一さんが託した「森」と「音」

2023年〈令和5年〉3月28日に他界した世界的音楽家、坂本龍一さんは環境問題に深く関心を持ち、環境保護や持続可能な社会の実現に向けて様々な取り組みを行ってきました。

その一つが、「MORE TREES(モア・トゥリーズ)」という植林活動です。この活動は、2006年に坂本龍一さんが設立し、音楽と環境の融合をテーマに、音楽イベントやコンサートの収益をもとに、世界中で植林活動を行っています。

MORE TREES

音楽と環境の融合、そして持続可能な社会の実現

MORE TREESの目的は、環境保護と社会貢献を通じて、豊かな自然と健康な社会を実現することです。

音楽と環境保護を結びつけることで、社会的な意識啓発を行い、環境問題に取り組む人々の支援を得ることを目的としています。 MORE TREESは、植林をはじめ、エネルギーの創出、地球温暖化防止、貧困や飢餓の解消など、環境や社会に貢献する活動を幅広く行っています。

具体的な活動としては、世界各地での植林プロジェクトや、植林支援活動、地球温暖化対策としての再生可能エネルギー導入支援、水道普及支援、貧困層への支援などを行っています。MORE TREESは、活動資金として、坂本龍一さんが自らの音楽活動やコンサートで得た収益や、寄付金などを活用しています。

また、MORE TREESは、自然環境と人間との関係性を深く考え、人々が自然と調和したライフスタイルを実現するために、「木と生活」をテーマに、さまざまなイベントやプロジェクトを展開しています。

MORE TREESは、環境保護に取り組む人々の支援を通じて、持続可能な社会の実現を目指している、坂本龍一さんの取り組みの一つであり、音楽と環境の融合がもたらす新しい価値を提供しています。

環境に配慮した音の世界へ

また、坂本龍一さんは、環境に配慮した音楽活動も行っています。例えば、坂本氏が使用する楽器や音響機材は、省エネルギーであることやリサイクル可能であることにこだわっています。さらに、自身のライブイベント「async」は、”不定期でありながら、刻々と変化する時間軸”を表す言葉で、坂本龍一さんの音楽哲学を表現したものです。

async

asyncは、坂本龍一さんがこれまで培ってきた音楽的なアイデンティティーや技術を活かし、環境に配慮した演出や、新しい音楽体験を提供することを目的に開催されます。例えば、省エネルギーであるLED照明を使用したり、映像演出に立体投影を取り入れたりするなど、環境保護に配慮した演出が行われます。

また、坂本龍一さんは「async」において、音楽と科学技術との融合を進めています。
例えば、2018年に開催された「async – remodels -」では、坂本氏が手がけた楽曲を、AI技術を用いて再構築した音源を使用したパフォーマンスが行われました。また、2020年に開催された「async – Live at the Park Avenue Armory -」では、VR技術を用いたリアルタイム演出が行われ、遠隔地からでも参加できる新しいライブ体験を提供しました。

asyncは、坂本龍一さんが音楽と環境問題に向き合い、新たな音楽表現を追求するための試みであり、世界中から注目を集めています。

最後まで守り続けた神宮の杜

坂本龍一さんは、東京・明治神宮外苑に計画されている新しいスタジアムの建設に反対し続けてきました。

この新しいスタジアムは、2020年に東京で開催されたオリンピック・パラリンピックのメインスタジアムであった国立競技場の跡地に建設される予定で、計画には東京都と日本スポーツ振興センターが関わっています。しかし、建設計画には、周辺環境の破壊や、財政的負担などの問題が指摘され、地元住民や市民団体から反対の声が上がっています。

坂本龍一さんは、この新しいスタジアム計画に対し、「都市の自然環境を壊し、周辺地域の住民に負担をかけるだけでなく、膨大な建設費用をかけることは無駄だ」として、反対の立場を表明していました。彼は、代わりに既存の競技場を改修し、より持続可能な方法で開催を行うべきだと主張しています。

また、坂本龍一さんは、環境問題や都市計画について積極的に取り組むことでも知られており、彼の反対声明は、環境問題に対する意識を高めるためにも注目され、多くの著名人の賛同を得ています。

坂本龍一さんは亡くなる直前まで音楽と環境の融合をテーマに、植林活動や省エネルギーなど環境保護に向けた様々な取り組みを行い続けました。
彼が託した未来を受け継ぐのが我々の使命です。

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